2023年12月、R1250RSが納車されてから三年がたったこの年、ついにBMW Motorrad ConnectedアプリのAndroid版が日本地図対応した。
本記事では、アプリのナビ機能の実力を検証していこうと思う。
読まなくてもいい前説
R1250RSを始めとしたBMWのバイクには、「BMW Motorrad Connectedアプリ」というアプリと連携できる機能が存在している(以下、当記事では本アプリと呼称する)。
これはスマホアプリと車両とをBluetoothで接続して、車両の状態をスマホで確認したり走行ログを取ったり、さらには簡易ルート案内を車両のモニターに表示することができる。
……という代物なのだが、長らく日本語対応がされていなかった。
そのせいで、RSのメニュー画面に存在している「ナビゲーション」の項目は、日本では使えないくせに立派にメニューだけは存在しているという腹立たしいものであり、RSの数少ない欠点の一つとなっていた。
細かいことは粗探しインプレの記事に書いたよ。
権利の問題で日本地図対応は絶望的と言われて数年、2023年の6月ごろに突如アプリが日本地図と日本語に対応した。
……のだが、対応したのはiOS版だけで、Android版は一ヶ月後の7月に対応の予定ということで、喜びもつかの間、Galaxyを愛用している私はもう一ヶ月待たされることとなった……のだが。
その後、7月が11月になり、11月が翌年2月になるというまさかの大延期。完全に煮え湯を飲まされることとなった私は怒りを通り越してもはや呆れ、もはやAndroid対応はする気がないんじゃないかとすら思い始めていた。
ところが、
12月頃、突如Android版にも日本地図が実装された。一体何なんだ。
まえがきが長くなったが、今回はようやく日本語でも全機能が使えるようになった本アプリの、主にナビ機能を中心にインプレを行いたいと思う。
もちろん、私はBMW Motorradから一円も金をもらっていないので、粗探しをメインで書いていく。
アプリの基本機能や概要が知りたければ、先に貼った公式サイトでも読んでください。
ナビ
多くの人が本アプリに期待することは、ナビ表示だろう。
初めに書いておくと、RSを始め、GSやRといった多くのBMWバイクに搭載されている6.5インチのTFT液晶多機能メーターは、大画面かつ優秀なモニターではあるけど、本アプリを使っても直接地図表示をすることができない。
現状、バイク側で直接地図表示をすることができるのは、10インチの液晶を搭載しているR1250RTだけである。
RSで本アプリを使った場合、車両側「ナビゲーション」メニューに表示される内容は、以下のようなものになる。
この様に、次に曲がる場所の名前と距離、方向を矢印で表すだけの、いわゆるターンバイターン方式の簡易なものだ。
アプリを使って普通のカーナビのように地図表示をしたい場合は、車両についているナビステーに取り付けるスマホホルダーである「MOTORRAD CONNECTEDRIDE CRADLE」を使う必要がある。
使う必要があるのだけど、なんと55,000円もする。いくら充電機能がついていて、車両のハンドルのダイヤルでスマホを直接操作できるとはいえ、5万円強は高すぎである。絶対に貧乏人には買えない価格設定、さすがはBMW。というか、普通の人でもおいそれとは買えない価格である。
というか、仮にこれを使ってもスマホには振動でダメージが入っていずれカメラあたりが故障するのは必至なので、そもそもバイクにスマホを直接取り付けたくない。
なので、本記事では以降もスマホはポケット放り込んだまま、あくまでもアプリと車両のみでできることを検証していきます。
ルート設定
アプリ側でのルート設定は、普通の地図アプリとほぼ同じ。
目的地の名称や住所を入力するだけ。
Googleマップと比較するのは酷かもしれないけど、施設やスポット名の充実度は比べ物にならない。特に店舗は名前で検索しても出てこない場所もままある。
地図上を長押しすることで場所の直接指定ができるので、そっちを使ったほうがいいかもしれない。
ルートのオプション設定はそこそこ充実している。
カーブの多さを指定できるのは面白いね。
ただ、デフォルトで選択されている「早い」のオプションはルート選びにセンスがないとしか言いようがない。
とにかく最短距離だけを重視したルーティングを行うようになっているようで、少しでもショートカットできる場所があれば脇道に突っ込んでいこうとするので、正直現実的ではないと思う(昔のGoogleマップの案内もこんな感じだった気がする)。
なので、「効率的」の方を選択しておくのがいいと思われる。
車両側での操作
これは結構驚いたんだけど、車両側でもできることが割とある。
さすがに目的地を直接入力したりはできないが、それに近いことはできる。
予め場所をお気に入り登録しておけば、車両側からルート作成することが可能。
「POI」の項目では、現在地近くにある施設をジャンル別に検索することもできる。これは結構便利かもしれない。
ガソリンスタンドだけではなく、飲食店を探したりもできる。
こまごまとした仕様
アプリと接続した状態だと、車両の液晶画面に現在走行中の道路の制限速度が表示される(車両側で設定をONにしている場合)。
ただ、高速道路の突発的な速度規制(工事によるもの等)には流石に対応していないようだ。
これは速度計以外の表示のときも、画面上に常時表示される。設定で消すことも可能。
また、ナビゲーション画面以外にしていた場合でも、曲がる箇所が近づいてくるとポップアップして通知してくれる。
この状態でハンドルのダイヤルを右に傾けると、直接ナビゲーション画面に遷移することができる。
気になった点
何度か使っていて気になった点は、概ね以下の4点だ。
①に関しては、ルーティング設定のところと純正ナビの記事にも書いたけど、国産カーナビに比べると日本の道には弱い。元々が日本開発のナビゲーションではないので、多少は仕方ない気はする。
②に関しては明確な不具合で、インカムに飛ばせる音声案内(女性の音声だ)が異常なレベルに早口になってしまう。ある程度の速度で走っていたら音声案内はあまり聞こえないけど、機能として実装されているのなら使い物になるようにしてほしいところ。アップデートで修正されることを期待したい(おま環の可能性もあるけど……)。
③は仕様のところで少し触れた、「車両の液晶画面がナビ以外の画面になっていても、曲がる箇所が近づいてくるとポップアップして通知してくれる」機能に関するもの。
本来であれば、ナビ以外の画面になっていたとしても、交差点手前に近づくとリマインド的に次の進行方向を教えてくれるはずなのだけど、これが曲がるはずの交差点でも発動しない時がある。ナビに頼り切っているとうっかり通り過ぎてしまう可能性があり、割と困る不具合だと思う。発生条件は不明。
④はBluetooth特有の不安定さによるもので、休憩の後再度走り出すときに接続がうまくいかないことがある。何回か再起動していれば直るが、地味に腹の立つ不具合だ。
まとめ
正直なところ、スマホと車両側のターンバイターン方式のナビゲーションだけでは、全く知らない道を安心して走行することはできないと思う。地図表示無しで、右左折方向の指示に頼り切りで走るには、さすがに不十分すぎると言わざるを得ない。やはり、あの高いスマホクレードルとの併用が前提になっているんじゃないだろうか。
逆に、ある程度予習済みの道だとか、元々紙の地図派の人とかが補助的に使うのであれば、不足はないと思う。
R1250RSに乗り始めてから三年越しにまさか使えるようになるとは思っていなかったので、そういった点では嬉しさもある。
けど、RSよりも安い国産車でもスマホアプリとの連携で地図を表示できる車両は増えているから、明確な強みとか良さになっている感は無い。むしろ、値段から考えるとちょっと(アプリの)作りが適当なんじゃないのか? と思えてくる。
BMWモトラッドの売上は日本でも好調らしいから、もう少しこういう細かいところにも力を入れてほしいな、と切に思う。
(おわり)